2006年に全米公開され、10年以上経っても根強い人気を誇る『プラダを着た悪魔(The Devil Wears Prada)』。
2020年の「金曜ロードショウ」では、女性からもっともリクエストが寄せられた映画であり、今もなお各世代の女性から支持を受けている作品です。
恋愛に仕事にファッションと『プラダを着た悪魔』は多くの女性たちから憧れや共感を集めていますが、仕事とプライベートの両立の難しさなど現代社会の男性たちも共感できる部分がたくさんあることも魅力のひとつです。
今回は、数々のトリビアや知られていない裏話を織り交ぜながら、『プラダを着た悪魔』のさらなる魅力に迫ります。観た人はもう一度観たくなっちゃうかも。
これって実話?『プラダを着た悪魔』の誕生について
2003年、ローレン・ワイズバーガーという無名の26歳の女性作家が、ファッション雑誌編集長のアシスタントとして働いたときの体験を元にした話。それが『プラダを着た悪魔』であり、彼女のデビュー作です。
そのファッション雑誌とは『ヴォーグ(Vogue)』のこと。ローレンを雇った編集長が、アメリカのファッション界のカリスマ、アナ・ウィンターであることが分かり、業界で話題になりました。ミランダは架空人物だと作者自身は主張していますが、「ミランダってアナのことよ」と噂が広がり、小説は大ヒットしました。
『プラダを着た悪魔』情報
- 原題:The Devil Wears Prada
- 公開:2006年(アメリカ映画)
- 劇場公開日:2006年11月18日
- 配給:20世紀フォックス映画
- 監督:デヴィッド・フランケル
- キャスト:アン・ハサウェイ、メリル・ストリープ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチなど
受賞歴
第79回 アカデミー賞(2007年)
🔷ノミネート🔷
主演女優賞:メリル・ストリープ
衣装デザイン賞:パトリシア・フィールド
第64回 ゴールデングローブ賞(2007年)
🔷受賞🔷
👑最優秀主演女優賞(コメディ/ミュージカル):メリル・ストリープ
🔷ノミネート🔷
最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル)
最優秀助演女優賞:エミリー・ブラント
概要
ローレン・ワイズバーガーの小説が原作の『プラダを着た悪魔』は、人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』シリーズで演出を務めたデヴィッド・フランケルが監督です。豪華な衣装を担当したのは『セックス・アンド・ザ・シティ』シリーズのスタイリスト、パトリシア・フィールドで、過去にエミー賞を受賞しています。
主人公、アンドレア(以下、アンディ)役を演じるのは、アン・ハサウェイ。『レ・ミゼラブル』(2012)でアカデミー賞助演女優賞を受賞、『オーシャンズ8』(2018)では彼女の好演が話題となりました。また、『プリティ・プリンセス』シリーズで魅せたハサウェイの変身ぶり。『プラダを着た悪魔』でも注目です。
アンディが働くことになる雑誌社の編集長ミランダ役を大女優、メリル・ストリープが演じます。メリルの圧倒的な演技力が評価され、ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミージュカル・コメディ部門)を受賞、アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされました。
また、ミランダの元でアンディと一緒に働くエミリー役にはエミリー・ブラントが起用されました。この映画でハリウッドに進出したブラント。『メリー・ポピンズリターンズ』(2018年全米公開)で主演を演じています。
あらすじ(ネタバレ注意)
➀おしゃれに無頓着なジャーナリスト志望のアンディ。
夢を実現するためにNYへやってきた。そんな彼女が飛び込んだのが一流ファッション誌“ランウェイ”の編集部。ハイブランドを身にまとう女性たちは、野暮ったいアンディを見て絶句する。
②ファッションに興味が無くても、自分の実力を認めて欲しいと思ったアンディ。
そんな彼女を待っていたのが鬼編集長で知られるミランダ・プリーストリーだった。アンディはミランダの第二アシスタントとして働き始めるが、そのポジションは世界中の女性が憧れる仕事と言われながら、本当は何人もの犠牲者を出してきた恐怖のポストだった。
③周りから恐れられるキャリアウーマンのミランダ。
ファッション誌の鬼編集長であると同時に、ファッション業界に絶大な影響を与える存在。彼女がNo!と言えば、変更せざるを得ない。彼女の意見は絶対で、デザイナーさえもコレクションの変更を余儀なくされる。
④第二アシスタントと働き始めたアンディ。
ミランダからの悪魔のような要求と昼夜を問わず鳴り続ける携帯と毎日奮闘することになる。「気品もファッションセンスもないわ!」と手厳しい批評に、どうにかしてミランダを見返したいと奮闘するアンディ。
スタイリストのナイジェルの助けを得て、田舎くさいと嘲笑された彼女がハイブランドの服を着こなす洗練された女性に大変身!野暮ったいと笑われた彼女がハイブランドの服を着こなす洗練された女性に大変身!スタイリッシュな格好を手に入れます。
⑤ところが、ミランダの要求は激化していくばかり。
彼女は双子の娘たちのために出版前のハリー・ポッターの新作を手に入れるようにアンディに要求します。「本が手に入らなければ、オフィスに戻ってこなくていいから」とまで言われてしまうアンディ。必死に仕事をこなしていくものの、同棲中の彼と距離ができ、私生活にも暗雲が…。
この仕事を続ければジャーナリストへの道が開けると信じていたアンディ。それなのに、いつクビになるか分からない状況に…。絶体絶命の大ピンチ!
⑥危機を乗り越え、次第に仕事を完璧にこなしていくアンディ。
ミランダも彼女を評価するようになる。その証拠に、ランウェイにとってもっとも重要なパリのコレクションに、ミランダのアシスタントとしてアンディは指名される。しかし、仕事に明け暮れた代償は大きく、アンディは彼とすれ違い、距離を置くことに。
⑦初めてのパリに到着したアンディ。
豪華なファッションショーやパーティーでミランダのアシスタントして仕事を次々とこなしていく。ところが、パーティーにミランダの夫が出席しないことが分かる。それはミランダが離婚寸前であることを意味していた。
それに追い打ちをかけるようにランウェイの編集長を辞任させられそうになっていることをアンディは知ってしまう。どうにかしてそのことをミランダに伝えようとするが、ミランダは聞く耳を持たない。実は彼女はすべて承知していた。そしてすでに手を打っていた。
⑧プライベートを犠牲にしても第一線で働き続けるミランダ。
そのミランダがアンディにあなたは私に似ていると言う。自分自身のために決断することができると。百万人の女の子が憧れる仕事なのだ。その仕事のためになんだって犠牲にできると。
そんなミランダの言葉で自分にとって大切にしたいもの、本当の自分の居場所に気づかされたアンディ。ミランダから離れ、大切な人たちがいるNYへと戻っていく。
知ればもう一度観たくなる『プラダを着た悪魔』トリビア
➀実はこの小説が出版される前にもう映画化の話は決まっていたとか。
②『セックス・アンド・シティ』の演出家・デヴィッド・フランケルと衣装・パトリシア・フィールドがそれぞれ監督と衣装を担当している。ナイジェル役のスタンリー・トゥッチはあるインタビューの中で、「この映画の主役はファッションで、僕ら俳優は脇役なんだ」と答えたほど。
それもそのはず、豪華な衣装の数々は当初10万ドルの予算だったのが、集まった衣装やアクセサリーは結果的に100万ドル分(約1億円)になったそう。
③アンディの衣装だけでも65着使われている。ミランダのシルバーのウィッグや離婚の件を告白するシーンでノーメークで演じたのはメリル自身のアイデアだったそう。
④メリル・ストリープ、ミランダ役の参考にしたのはあのクリント・イーストウッドだとか。
🔽『マディソン郡の橋』で共演!
声を荒げない、大きな声で話さないなど、その話し方は周りを聞き入らせ、力のある人物であることを表現できるとメリルは明かしています。
◎アンディ役はハサウェイが熱望して勝ち取ったってホント⁈
実はこの映画の新人アシスタント役にハサウェイは最初の候補に上がっていませんでした。『プラダを着た悪魔』の15周年を記念した制作関係者のオーラルヒストリー(証言や口述)でデヴィッド・フランケル監督は、「レイチェル・マクアダムスに3回申し込んだ」とアンディ・サックス役について語っています。
レイチェル・マクアダムスと言えば『きみに読む物語(The Notebook)』でアリー・ハミルトン役を見事に演じた素敵な女優。その彼女はファッション誌の新人アシスタント役に魅力を感じなかったようですが、ハサウェイはその役を熱望し、必死だったことを認めています。
その他の女優で考慮されていたのは、スカーレット・ヨハンソン、ナタリー・ポートマン、ケイト・ハドソン、キルスティン・ダンストなどが入っていました。その中でハサウェイは9番目の候補だったことが明らかになっています。
ハサウェイは当時、今ほど大きな仕事はなかったと言います。アンディ役を射止めるためにハサウェイはとても真剣に、しかしとても楽しい方法でアプローチをしたようですよ。
元フォックス2000社長のエリザベス・ガブラーは次のように回想しています。「ハサウェイはフォックス2000のオフィスにやってきて、日本庭園の砂に『私を雇って(Hire me)』と書いた」と言うのです。しかも、そのアプローチはずっと続いたそうです。アンディの仕事に対する根気良さは、ハサウェイ自身に重なっているように思えます。
◎先輩アシスタント役に同じ名のエミリー・ブラントが選ばれた面白エピソードとは⁈
アンディの先輩アシスタントのエミリー役はなんと、100人以上の女の子をオーディションしていました。実はエミリー・ブラントはプラダのオーディションが行われていた時、ロサンゼルスで『エラゴン(Eragon)』のオーディションを受けていました。土壇場になって彼女のエージェントは、エミリーに言わずにプラダのオーディションビデオを送っていました。
フランケル監督は、エミリーのオーディションビデオを観て彼女が適任だと分かると、「エラゴン」のオーディション結果を待つ必要があったと言います。「エラゴン」と「プラダ」が同時に撮影されるように設定されていたので、両方の仕事を奪うことはできないと判断したからでした。
「エラゴン」のオーディションでエミリーが選ばれないことを知ったフランケルはそのことに喜び、祝ったと言います。そして、その夜、エミリー役をオファーするために彼女の家に電話をすると、母親が電話に出て、「バーに行った」と言いました。彼女はオーディションに落ちて腹を立てていたのです。
そんな彼女に連絡した時のことをフランケルは次のように回想します。「私は彼女に電話しました。彼女は飲んでいて、町のバーで悲しみに溺れていました。そこで私はこう言ったのです。『心配しないで!貴女の人生最悪の日は、実は貴女にとって人生最高の日だよ』と」。
そして最後に、「スタジオではもう一度貴女に会いたがっています。今度はドレスアップして来てくれますか?」と付け加えたそうです。それは何故かというと、送られたオーディションビデオを撮影した時、時間がなかったので、エミリーはデニムとビーチサンダルといった出で立ちだったからでした。その後、無事に再度面接を済ませ、エミリー役を獲得したのでした。
『プラダを着た悪魔』のブロードウェイ・ミュージカルが来年公演!
ミュージカル版『プラダを着た悪魔』が来年夏に公演することが決定しました(2021年8月現在)。なんと、エルトン・ジョンが音楽を担当することに!場所はシカゴのジェームス・M・ネダーランダー・シアター。公演期間は2022年7月19日から8月21日までとなっています。
The Devil Wears Prada:Broadway in Chicago
まとめ
「映画『プラダを着た悪魔』って実話なの?誰も知らないここだけの裏話」は如何でしたか?公開してから15年以上経っても、各世代の女性に人気の作品です。ファッションに興味のある方はもちろんのこと、元気がほしい人にぜひ観てほしい作品です。
かなりのブラック企業ですが(💦)、アメリカでは下っ端はクリーニング屋に行って服を取りに行くことや家族の用事をこなしたりするのは結構当たり前にあります。私もアメリカでCM制作会社のレセプショニストをカレッジ卒業後やったことがありますが、まさにアンディと同じように使用人のように振り回されてました(😢)。
華やかなファッションに心が躍る部分と理不尽な階層社会と戦う部分がパラレルに展開しているところもこの映画の魅力だと思います。
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🔸Author:あみ(Ami)🔸
メディアプロデューサー/英語講師
日本の私立短大家政科卒。証券会社に就職後、渡米。大学でテレビ、ラジオ、及び映画制作を学ぶ。卒業後、日本のテレビ・ラジオ・出版などマスメディアの仕事に従事。趣味は日本文化・伝統芸能・ヨガ・旅行・料理。近年は心理学・歴史・神社仏閣の造詣を深める。2019年、神社検定弐級合格。