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大嘗祭(だいじょうさい)とは? 今さら聞けない日本の祭祀

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改元に伴い、元号が5月1日から令和になり、天皇陛下の主要な皇位継承儀式が、この秋に相次いで行われます。

10月22日の陛下が内外に即位を宣言する 『即位礼正殿の儀』では、195カ国の代表が招かれることになっています。そして、11月14日には、天皇の即位に伴う一世一代の儀式、『大嘗祭』(だいじょうさい)がまるで平安絵巻そのままに繰り広げられます。

日本の祭祀・大嘗祭(だいじょうさい)とは? 

さて、大嘗祭ってどういう儀式? なんとなく分かるけど、うまく説明できない…。そんな方のためにまとめてみました。

1.2019年の皇室の重要儀式

今月(10月)の2日、宮内庁から『大嘗祭』(だいじょうさい)の中心儀式『大嘗宮(だいじょうぐう)の儀』や、その他の即位関連儀式の日程が発表されました。新天皇の一世一代の重要儀式。今年の代替わりに係わる他の儀式も一緒に見てみましょう。

皇室の重要儀式の日程

平成31年 1月 7日     天皇陛下ご即位から30年 

2月24日       天皇陛下御在位三十年記念式典

4月 1日        政府、新元号『令和』発表

  30日        陛下がご譲位 退位礼正殿の儀

新元号元年 5月 1日   皇太子殿下、新天皇にご即位 改元
剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀及び即位後朝見(ちょうけん)の儀

  8日  賢所(かしこどころ)、皇霊殿神殿(こうれいでんしんでん)に期日奉告の儀

  13日   斎田点定(さいでんてんてい)の儀

9月27日   斎田抜穂(さいでんぬきほ)の儀  (栃木県と京都府)

10月22日   即位礼正殿の儀

🔶祝賀御列の儀⇒ 11月10日に延期

22、25、29、31日 饗宴の儀

11月14、15日   大嘗祭の主要儀式『大嘗宮の儀』

16、18日   大饗の儀

大嘗祭で天皇陛下がお召しになる御祭服
出典: ウィキペディア(Wikipedia)

平安絵巻のような雅な装い

即位礼正殿の儀』 が行われる10月22日は、今年限定で国民の祝日となり、官公庁、銀行などはお休みです。

皇居・宮殿の一番格の高い正殿『松の間』で、儀式が執り行われます。 天皇だけが着用できる黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)の御束帯をお召しになった新天皇が、高御座(たかみくら)にのぼり、即位を宣言するお言葉を述べられます。

黄櫨染は天皇陛下が儀式で着る袍の色
出典: ウィキペディア(Wikipedia)

ちなみに黄櫨染御袍とは、「黄櫨染」の色の袍(ほう)のことで、黄櫨染(こうろぜん/はじぞめ)は櫨(はぜ)の樹皮と蘇芳(すおう)の植物から染め出された色です。「赤みがかった黄色」「黄がかった茶色」などと言われています。

出典: ウィキペディア(Wikipedia)

上図にある袍は公家の装束の盤領 (まるえり) の上衣のことで、朝服の上衣のひとつです。武官・幼年用の闕腋袍(けってきのほう)と、文官用の縫腋袍(ほうえきのほう)があります。 両わきの袖付けの下を縫い合わせないのが闕腋袍で、 袖付け下を縫い合わせたのが縫腋袍だそうです。

高御座は日本の天皇の玉座を意味し、皇位を象徴する重要な調度品です。平安時代の即位式から使われています。現在の高御座は、1915年に大正天皇の即位礼のときに造られたもので、高さ6.5メートル、重さ8トン。 天蓋の中央には御倚子( ごいし)が据えられています。

高御座

また、十二単姿の皇后殿下が、右隣の一回り小さな御帳台(みちょうだい)に入ります。他の皇族方も装束姿で勢ぞろいされるとのこと。『即位礼正殿の儀』で使われる高御座と御帳台は、 昨年の9月25日に京都御所で解体、梱包し、皇居に運ばれています。

(左)高御座(右) 御帳台

招待国は前回よりも30か国増えたので、招待者は195カ国からの祝賀使節をはじめ、内外の代表約2500人と言われています。ちなみに前回は約2200人でした。

即位礼正殿の儀』は約30分で終わり、その後に祝賀パレード『祝賀御列(おんれつ)の儀』のために天皇・皇后両陛下は洋装に着替えられ、皇居から赤坂御所(前東宮御所)まで4.7キロメートルの道程をオープンカーに同乗し、パレードを行う予定でした。17日に政府は、台風19号の被災地への対応に万全を期すため、祝賀パレードは三週間後の来月11月10日に実施すると発表しました。『即位礼正殿の儀』 や祝宴『饗宴(きょうえん)の儀』については予定通り行うそうです。

祝賀パレードは『祝賀御列の儀』という国事行為。各府省庁が綿密に準備を進め、10月6日朝には、パレードのリハーサルが都内で行われ、警察官が一同に会し、本番さながらの警備態勢で、実際のコースを走行したようです。

祝賀パレードの延期は楽しみにされた方々には残念ですが、台風19号の被害を受け、被災した方々のために配慮された延期だと思います。

2.大嘗祭とは?

いよいよ一世一代の大嘗祭が行われます。雑誌『皇室』には、大嘗祭とは、天皇が即位後、大嘗宮悠紀殿(ゆきでん)および主基(すき)殿において、初めて新穀を皇祖や天神地祇に供えられ、天皇自らも召し上がり、国家・国民のためにその安寧と五穀豊穣などを感謝し、祈念される儀式と説明されています。

また大嘗祭は、毎年、歴代天皇が宮中で行っている新嘗祭(にいなめさい)とほぼ同じ内容を、新天皇が大掛かりに儀式を執り行います。大嘗祭の読み方は、一般的に「だいじょうさい」と読みますが、他にも「おおなめさい」「おおにえのまつり」などがあります。

新天皇が即位後に初めて行う新嘗祭が大嘗祭ですが、実は夜通しで行われる大変な儀式でもあります。11月14日の午後6時半から「悠紀殿供饌(ゆきでんきょうせん)の儀」、そして翌日の15日午前0時半から「主基(すき)殿供饌の儀」が行われます。 この神事は、皇居の東御苑で、「大嘗宮」を造って行なわれます。 大嘗宮は大嘗祭を行う祭祀の場所。大嘗祭ごとに造営されます。

大嘗宮の全体模型
出典: ウィキペディア(Wikipedia)

上の写真は大嘗宮の全体模型です。奥が「主基殿(すきでん)」、そして手前が「悠紀殿(ゆきでん)」です。純白の御祭服(ごさいふく)をお召しになった新天皇が朧げな光の中、「悠紀殿(ゆきでん)」に入られます。皇后殿下は白の十二単をお召しになります。

出典: ウィキペディア(Wikipedia)

祭祀では、天皇が悠紀殿にお入りになり、 皇祖の天照大神(あまてらすおおみかみ)をはじめとする神々に、 米、粟や白酒(しろき)黒酒(くろき)、アワビの煮物など、さまざまな神饌(しんせん)をお供えになります。そして、国家・国民の安寧と五穀豊穣に感謝し、未来永劫、これからも平和が続くことを祈願する御告文(おつげぶみ)を読み上げられます。その後、直会(なおらい)といって、神前に供えられた神饌を陛下御自身も召し上がります。

約3時間の儀式を終えた後、陛下は一度お休みになり、翌日未明、再びの主基殿同じ所作を繰り返します。農耕文化に根ざした日本独特の儀式。歴代の天皇が国家・国民のために継承されてきた大切な国事行為は想像以上に大変な儀式でした。

3.新嘗祭とは?

新嘗祭とは、毎年11月23日に宮中と全国の神社で行われる『収穫祭』のことです。日本書紀に神代や仁徳天皇の御代にも「新嘗」という言葉が使われていることから、起源は稲作が始まった弥生文化まで遡ると考えられているようです。一般的に「にいなめさい」と言われていますが、「しんじょうさい」とも読みます。

新嘗祭は宮中祭祀と言って、天皇陛下が国家・国民の安寧と繁栄を祈ることを目的に執り行う祭祀のひとつです。実は、2月17日の祈年祭(きねんさい)とセットで考えられたお祭りで、 春の耕作のはじめに祈年祭、そして秋の収穫に新嘗祭を行い、五穀豊穣をお祈し、収穫を感謝する大切な行事なのです。

大嘗祭のところで説明したものと一部重複しますが、宮中にある「神嘉殿(しんかでん)」の中に設けられた神座・御座に、天皇陛下が日没と日の出の時間帯に、皇祖である天照大御神(アマテラスオオミカミ)とすべての神々天神地祇(テンジンチギ)に神饌をお供えします。天皇陛下が直々にその年の新穀で作られたお食事を供えられ、ご一緒に食事を召し上がります。神様とお食事されるのは、天皇陛下だけであり、新穀で皇祖・すべての神様をもてなし、一緒に食事をすることで新たな活力を得て、新しい年もまた五穀豊穣を約束される行事とも考えられています。

じつは、戦前までこの日は、日本人にとって極めて重要な祝祭日でした。ところが、大戦後に国家神道と結びついた新嘗祭を危険視したGHQ(連合軍総司令部)によって、「勤労感謝の日」と名を改められ、年々本来の意味合いが薄れ、今日に至っています。

4.大嘗祭で執り行われる一連の儀式

🔶斎田点定(さいでんてんてい)の儀…①
🔶斎田抜穂の儀 
神宮に勅使発遣の儀 
大嘗祭前一日鎮魂の儀 
大嘗祭当日神宮に奉幣の儀 
大嘗祭当日賢所大御饌供進の儀 
大嘗祭当日皇霊殿神殿に奉告の儀
🔶大嘗宮の儀(悠紀殿供饌の儀・主基殿供饌の儀)
🔶大饗の儀
🔶即位礼及び大嘗祭後神宮に親謁の儀 
即位礼及び大嘗祭後神武天皇山陵及び前四代の天皇山陵に親謁の儀 
即位礼及び大嘗祭後賢所に親謁の儀 
即位礼及び大嘗祭後皇霊殿神殿に親謁の儀 
即位礼及び大嘗祭後賢所御神楽の儀

①斎田点定(さいでんてんてい)の儀

大嘗宮の儀で神様に初穂をお供えしますが、その初穂を育てる田んぼを『斎田』といい、その斎田をきめるのが斎田点定の儀です。今回は2019年5月13日午前に宮中三殿のひとつ、神殿の前で行われたそうです。

儀式は亀ト(きぼく)という占いで、亀の甲羅を焼いてひびの入り具合で占い、「悠紀の国(ゆきのくに)」 と 「主基の国(すきのくに)」を選び、それぞれの地域で栽培されたお米が儀式で使われます。

悠紀の国 は東日本、主基の国は西日本のことで、選ばれた田んぼがあるそれぞれの地域から亀トで選ばれます。儀式は約40分間行われ、今年の斎田は栃木県と京都府に決定しました。

宮内庁によると、亀の甲羅は東京都小笠原村で捕獲したアオウミガメのものを使って亀トが行われたそうです。アオウミガメは絶滅危惧種に指定されているので、特別に捕獲が認められた小笠原村で2018年秋に甲羅を8枚購入しました。

甲羅は長さ24㎝、幅15㎝、厚さ1㎜。将棋の駒のような形に加工したものを使いました。具体的な占いの判断方法は明らかにされていませんが、桜の木にくべた火にかざした甲羅が、どのようにひび割れしたか、その具合をみて占うようです。

5.まとめ

今回の皇位継承儀式のまとめはいかがでしたか? 天皇の一世一代の儀式、『大嘗祭』 とその他の関連儀式がどんな行事でどのように行われるのか、とても興味深いですね。今上天皇は初代天皇から数えて126代目。年月で言ったら2679年です。世界を見渡せば、さまざまな王朝の勃興と滅亡が繰り返されている中、唯一日本だけが国家として継続していることは奇跡のようなものかもしれません。

また、国家・国民のために神様に祈り続けている元首はそうはいないと思います。それが日本の天皇です。新天皇が誕生した記念する年、そして今年限りの大嘗祭、ぜひ日本が存続している奇跡&軌跡を感じながら注目してみてくださいね。

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