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これだけは知っておきたい! 一年の豊穣を祈る『祈年祭』

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皆さんは、2月17日は何の日かご存知ですか? 

『祈年祭(きねんさい)』というその年の五穀豊穣を祈るお祭りの日。農耕社会を基盤として成立したとても大切な日本の文化です。

一年の豊穣を祈る『祈年祭』

近現代では、商工業も含めてすべての産業の発展、国家と国民ひとりひとりの繁栄を祈るお祭りと変化し、毎年執り行われます。さて、祈年祭はどのような由来や歴史があるのでしょうか?そこで今回は、祈年祭について詳しくご紹介したいと思います。

1.日本の農耕文化は天孫降臨の段まで遡る!?

「日本書紀」には、天照大御神が一束の稲穂を瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に授けられたことが記載されています。

原文:以吾高天原所御齋庭之穗、亦當御於吾兒。

訳:高天原のこの稲を大切に育てて、あなたの愛する子孫に、いつでも、好きなだけ、お腹いっぱいに食べさせてあげなさい。

このことを『斎庭稲穂(ゆにわのいなほ)の御神勅』と言い、瓊瓊杵尊とともに地上に降り立ったその稲は大切に育てられ、後世の私たちの食事を満たしてくれています。

この天孫降臨で、日本の始まりが農耕文化とともに位置付けられていることは大きな意味を持つと伊勢神宮のサイトで紹介していました。春に五穀豊穣を祈願し、秋の収穫に感謝するという日本人の一年の営みは、まさに稲の育成周期と合致しています。私たち日本人は、一年を通じて農耕・収穫の祭りを2000年以上繰り返してきたことになります。

2.令和2年・伊勢神宮の祈年祭の日程

祈年祭 2月17日(月)

日本の総氏神『天照大神』が鎮座する伊勢神宮(内宮)。こちらでは、以下の日程で執り行われます。

  • 外宮(豊受大神宮)  大御饌 午前4時    奉幣 午前7時
  • 内宮(皇大神宮)    大御饌 午前11時    奉幣 午後2時

所在地伊勢神宮

  • 内宮(皇大神宮)三重県伊勢市宇治館町1
  • 外宮(豊受大神宮)三重県伊勢市豊川町279

律令国家の恒例祭祀だった当時の祈年祭は、2月4日に執行されていました。神社本庁の『神社のいろは要語集 祭祀編』によると、一年の豊穣を祈願する最重要な日だったとあります。しかし、平安時代中期からは実質的な意味が薄れ、形式ばかりとなり、室町時代後期にはついに途絶えてしまいました。明治時代に入ってから再興し、今日に至っています。

3.祈年祭の由緒と歴史

祈年祭は、「としごいのまつり」とも呼ばれ、本来は、春の五穀豊穣を祈る国家の祭祀として取り上げられていました。

農耕生活がすべてだった時代には、豊作を祈願することは国家の安泰、国民の安寧を祈ることと同じでした。そのことから祈年祭は国家規模で行われ、平安時代中期に編纂された法典『延喜神名式(えんぎじんみょうしき)』には、幣帛(へいはく)と言って、祭祀の際に神々への捧げものが神宮を含めた全国2,861社に送られました。神宮では、天皇の命を受けた使者である勅使が派遣されて、五色(青、黄、赤、白、黒)の絹の反物などがお供えされました。

神社本庁の『神社のいろは要語集 祭祀編』によると、祈年祭の起源は、平安時代以降の宮廷年中行事などが記された『年中行事秘抄』や宮中行事や神道研究のための史料『公事根源』などには、天武天皇4年とされていましたが、『日本書紀』天智天皇9年3月条に、

山御井(やまのみい)の傍(ほとり)に、諸神(かみたち)の座(みまし)を敷きて、幣帛(みてぐら)を班(わか)つ。中臣(なかとみの)金連(かねのむらじ)、祝詞(のりと)を宣る。

『日本書紀』

と記述されていることから、月日や祭場が後世と違っていますが、祭祀の内容が合致していることで、この記述を所見とする学説が主流とされています。

戦前までは国の祝祭日で、大祭として各神社で2月17日に執り行われていました。戦後は、国家の管理を離れたために一時廃止されましたが、春祭りの形として祭祀が行われていたのが、次第に復活し始めました。

現在では、 毎年2月17日に宮中をはじめ全国の神社で祈年祭が行われ、あらゆる産業の発展と国家の安泰を祈願する重要な祭儀として位置づけられています。 伊勢神宮を始め、由緒ある大社や古社などでは、現在も古儀を継承し、祈年祭を斎行しています。

4.祈年祭は五大祭のひとつ

伊勢神宮・内宮

伊勢神宮で行われるお祭りは、年間1,500回以上あります。その中で、特に重要視されているのは、6月と12月に執り行われる月次祭(つきなみさい)と10月の神嘗祭(かんなめさい)で、これを三節祭(さんせつさい)と言います。

この三節祭の3つの祭典と、2月の祈年祭(きねんさい)と11月の新嘗祭(にいなめさい)を加えて、五大祭(ごだいさい)と言います。五大祭には必ず幣帛が捧げられ、天皇陛下からの5色の絹と綿の布が収められた辛櫃(からひつ)がお供えされます。ちなみに辛櫃とは、杉やヒノキでできた衣類や調度品を入れて運べる箱です。

五大祭

  • 6月・12月  月次祭
  • 10月        神嘗祭
  • 2月      祈年祭
  • 11月     新嘗祭

この年の五穀豊穣を祈ることが祈年祭。さて、五穀豊穣の「五穀」とは、どの穀物を指すのでしょうか?

じつは、具体的な五種を指さず、穀物全般を総称しています。時代や地域によって、主要な穀物が違っていることから、一定化していないようです。場合によっては、豆や麻などが五穀に挙げられることも。

古来でいう五穀とは、記紀では以下ような穀物が挙げられています。

  • 『古事記』 :稲・麦・粟・大豆・小豆
  • 『日本書紀』 :稲・麦・粟・稗・豆

現在では、米・麦・粟・豆・黍(きび)または稗(ひえ)を五穀と定義することが多くなりました。その顕著な例が、この五種をブレンドした五穀米(ごこくまい)です。 最近では五種に止まらず、 穀物・雑穀をブレンドした「スーパーフード」などが市場に出回るようになり、「雑穀米」「雑穀ブレンド米」とも呼ばれています。栄養価が高く、ダイエットにも良いと健康志向の人たちに人気ですね。

5.まとめ

その年の農作物の豊作と、国民の幸せを願うお祭り、祈年祭はいかがでしたか? 天皇陛下は伊勢神宮へ勅使を遣わして絹織物などを奉納されます。伊勢神宮では天照大御神をはじめとする神々にお食事をお供えする大御饌(おおみけ)の儀が早朝、続いて天皇陛下の幣帛を奉る奉幣(ほうへい)の儀が行われます。祈年祭は両正宮に引き続き2月23日まで、すべての宮社で執り行われます。全国の神社で執り行われる祭祀なので、この機会に近くの神社に伺うのもいいかもしれませんね。

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