あらゆる自己啓発書が多数出回っている今日、その中でも歴史的ベストセラーを誇るこの一冊。決して難しい書ではないのに、人が生きてゆくうえで身につけたい人間関係の構築や自己教育のノウハウなどが記されています。1936年に初版してから時代ごとに改良を重ね何度か改訂版を出していますが、この一冊はその最新版です。今回は、デール・カーネギーの『人を動かす』をご紹介します。
デール・カーネギー『人を動かす』
その後も幾つかの職を経験しましたが、デール・カーネギーに転機が訪れたのは大学時代に研究した弁論術を活かそうと、YMCAの話し方教室を担当するようになってからでした。当初は一晩に2ドルの報酬しか得られなかったのが、ついに彼の得る収入は一晩に30ドルになりました。彼の教室が話題となり、人が集まってきたのです。
さらにデール・カーネギーは活動を本格化し、成人教育、人間関係研究を目的とした「デール・カーネギー研究所」を設立しました。アメリカを中心にヨーロッパ各地で講習会を開き、指導にあたりました。来日したこともあり、昭和28年の夏に観光で京都を訪れています。
カーネギーの著書は、誰にでもわかりやすく構成されているのが特徴で、身近に感じられるような実話を取り上げた後、それに対する解説が連携して展開するスタイルなのです。あらゆるタイプの人がどのような問題に遭遇し、その問題解決のためにどう動いたのか詳細に説明している部分は読み手にも、「自分もできる！」と前向きな姿勢にしてくれます。
個人的にはこの本は社会経験が豊富な方よりも社会人になりたての方や数年経った方の方がより魅力的な一冊だと思いました。会社での上下関係など誰しもが経験する問題を明快に説明し、どうしたら問題をクリアにできるのかヒントもくれます。
読後感の良さもさることながら、読み終える頃には前向きな自分が存在していることに気づくことでしょう。それがこの本の魅力だと思います。