多民族国家というと、真っ先に思い浮かぶのは、「アメリカ合衆国」。以前から民族や人種の多様性が高い国であることから、『人種のるつぼ』と呼ばれてきた。 USニューズ&ワールド・レポートの分析によると、2018年に人口30万以上の66都市のうち、46都市(約70%)が2010年よりもさらに人種が多様化したと発表している。そこで、今回は2018年現在で最も人種的に多様な都市、ベスト10を紹介しよう。
米国で最も民族的に多様な都市はどこ?
1.アメリカ社会の現状と見通し
アメリカ合衆国国勢調査局(the U.S. Census Bureau)によると、年々多様化が進み、この傾向が続くと、2045年頃には、過半数を超える単一民族のグループは無くなり、かつてないほどカラフルな国家になると予測している。
ちなみに先程も出た『人種のるつぼ』。多様な人種・民族による多様の文化が社会の中で溶け合い、新たな文化を形成するという考えだが、英語では、『Melting Pot』、または、『Salad Bowl』 と表現する。
先月、USニューズ&ワールド・レポートは、2018年のアメリカ合衆国国勢調査局の人口推定値を利用して、人口30万人以上の大都市の人種的多様性を分析した。
この分析で興味深いのは、大都市の人種および民族グループから無作為に2人を選ぶと、ほとんどの場合、人種および民族が同じことがないほど、都市の人口は多様化していることが分かったという。2018年現在で最も人種的な多様化した大都市ベスト10は次の通り。
2.多様性の高い大都市・総合ランキングベスト10
10.イリノイ州シカゴ
- 人口:2,705,988人
- 人口シェア:
- 白人:56.6%
- 黒人:32.5%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:0.3%
- アジア人:7.4%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:0.02%
- ヒスパニック:28.7%
9.カリフォルニア州フレズノ
- 人口:530,073人
- 人口シェア:
- 白人:69.0%
- 黒人:7.6%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:1.7%
- アジア人:16.4%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:0.2%
- ヒスパニック:49.5%
8.カリフォルニア州ロサンゼルス
- 人口:3,990,469人
- 人口シェア:
- 白人:67.0%
- 黒人:11.2%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:1.0%
- アジア人:15.6%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:0.2%
- ヒスパニック:48.9%
7.テキサス州ヒューストン
- 人口:2,326,090人
- 人口シェア:
- 白人:62.4%
- 黒人:26.0%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:0.4%
- アジア人:8.4%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:0.1%
- ヒスパニック:44.9%
6.カリフォルニア州サンノゼ
- 人口:1,030,119人
- 人口シェア:
- 白人:46.8%
- 黒人:3.5%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:0.7%
- アジア人:41.9%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:0.6%
- ヒスパニック:32.4%
5.カリフォルニア州ロングビーチ
- 人口:467,353人
- 人口シェア:
- 白人:60.3%
- 黒人:16.6%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:1.1%
- アジア人:16.2%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:0.8%
- ヒスパニック:41.3%
4.ニューヨーク、ニューヨーク
- 人口:8,398,748人
- 人口シェア:
- 白人:49.6%
- 黒人:28.5%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:0.5%
- アジア人:16.7%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:0.1%
- ヒスパニック:29.2%
3.カリフォルニア州サクラメント
- 人口:508,517人
- 人口シェア:
- 白人:50.4%
- 黒人:15.2%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:0.6%
- アジア人:22.2%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:2.3%
- ヒスパニック:29.2%
2.カリフォルニア州オークランド
- 人口:429,114人
- 人口シェア:
- 白人:42.6%
- 黒人:28.2%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:1.1%
- アジア人:18.6%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:0.9%
- ヒスパニック:26.5%
1.カリフォルニア州ストックトン
- 人口:311,189人
- 人口シェア:
- 白人:49.6%
- 黒人:12.7%
- アメリカインディアンまたはアラスカ原住民:0.5%
- アジア人:23.6%
- ハワイまたは太平洋諸島のネイティブ:0.7%
- ヒスパニック:42.2%
3.アメリカ社会の傾向
人種や民族が多様化した大都市べスト10の中に、カリフォルニア州の7つの大都市がランクインしていた。都市2018年時点での外国出身者が占める割合から見ても、最も多い州は、カリフォルニア州(26.88%)。次いで、ニュージャージー州(22.91%)、ニューヨーク州(22.82%)となっている。
アメリカ国内全体でみると、過去10年ほどの都市の多様性の変化は緩やかだが、2010年から2018年の間に、大都市は平均して2%多様化している。
人口統計学と社会動向に焦点を当てたピュー研究センター (the Pew Research Center)の研究員であるリチャード・フライ氏は、「人口動態の変化はゆっくりと進行する傾向があり、その傾向は社会の現状を語ってくれる」と言う。
今回のスコアの特徴のひとつは、過去10年で米国のすべての大都市が多様化が加速したわけではないこと。 トップ10入りしたカルフォルニアのいくつかの都市、ロングビーチ、ロサンゼルス、フレズノは、2010年から2018年の間に僅かに多様性が低下している。
一方で、多様性の変化は多様化の低い都市でも見られ、例えば、デトロイトは21%多様性が増し、ヘンダーソン、ネバダ州およびコロラド州コロラドスプリングスでは10%以上多様性が増している。
ピュー研究センターによると、アメリカの過半数以上(64%)の人々は、人種および民族の多様性が国の文化にプラスの影響を与えるという感想を持っている。一方で、47%は人種的および民族的に多様な人口を持つことは、政府や政策決定機関などが国の課題に取り組むことを難しくすると考えている。
まとめ
2010年に見られた人種の多様性が高い大都市から、2018年には全米に徐々に広がっているようだ。 データから見る民族・人種の多様性の動向は、長いスパンで見ると今後の流れが予想しやすくなる。
今年は大統領選挙の年。アメリカ国内の人種的な多様性がさらに広がっている今、両陣営がどう施策を打ち出してくるのか見守りたいところだ。今後、どのように展開していくのか、今回のデータを踏まえて動向を注視してみたい。