以前から計画していた房総半島・館山の神社巡り。JR線の運行再開を待って15日に伺いました。安房神社をはじめ、被災された地域の一日も早い復興をお祈りします。
房総半島・館山 安房神社
今回は、応援も込めて、おすすめのスポット、安房(あわ)神社の紹介と現地の状況をお伝えします。
1.概要
新宿が始発の特急・新宿さざなみ号で館山へ向かいました。初めて乗車するということで、自然とわくわくしてしまいました…。土休日に「新宿さざなみ」は、新宿駅 - 館山駅間で中央本線・総武本線・外房線・内房線を経由して1~ 2往復運転される臨時列車。 数年前のダイヤ改正以前は、東京―館山間は毎日運行していたそうです。
特急・新宿さざなみ号は臨時列車ということで、注意点を↓にまとめておきました。
特急・新宿さざなみ
- 新宿〜館山間の運転
- 平日運転なし
- 土休日(土、日曜と祝日)に運転
- 臨時列車という性格上、季節によっては本数が増えたりするので、利用する際には、JRの臨時列車運行カレンダーで確認することをおすすめします。
新宿から館山まで2時間ちょっとかかりました。海岸線を走るので、乗車中は車窓から望む海や山などの大自然を満喫できます。ただ、今回は台風の影響で被災した地域があり、厳しい現実が目に飛び込んできました。
お隣の千葉で起きたことは、東京でも起きるかもしれない。今回の被災は、私にとっても他人ごとではなく、万が一に備えて対策を取ることが大切に思いました。また、心の準備も必要ですね。
2.安房神社の由来
安房神社は千葉県南部、半島房総半島最南端部の吾谷山(あづちやま)山麓にあります。 吾谷山は、標高101m。海上から目につきやすいほどよい高さです。 伝承では、現在の徳島県の阿波地方から渡ってきた 天太玉命(あめのふとだまのみこと)の孫・天富命(あめのとみのみこと)が 忌部氏(いんべうじ、斎部氏)の子孫を引き連れてこの地に上陸し、神社を創建したと 『古語拾遺』(こごしゅうい)に書かれています。
今から2670年以上も前の紀元前660年に、初代神武天皇の御命令を受けられた天富命(あめのとみのみこと) は、肥沃な土地を求めて、阿波国に上陸。そこで麻や穀(カジ=紙などの原料)を栽培し、開拓を進めました。
その後、更に肥沃な土地を求めて、 天富命の一族は阿波国に住む忌部氏の一族の一部を率いて、房総半島南端に上陸。ここにも麻や穀を植えて、開拓を進めたと言います。この地で天富命は布良浜の男神山・女神山という二つの山に、始祖である天太玉命と天比理刀咩命をお祀りしました。これが現在の安房神社の由来です。「安房」の国名は徳島から来た阿波忌部からとったものだそうです。
2.御祭神
🔷本宮(上の宮)
主祭神
天太玉命(あめのふとだまのみこと) 忌部氏(斎部氏)祖神
相殿神
天比理刀咩命(あめのひりとめのみこと) 后神
忌部五部神
櫛明玉命(くしあかるたまのみこと) 出雲忌部の祖
天日鷲命(あめのひわしのみこと) 阿波忌部の祖
彦狭知命(ひこさしりのみこと) 紀伊忌部の祖
手置帆負命(たおきほおいのみこと) 讃岐忌部の祖
天目一箇命(あめのまひとつのみこと) 筑紫(福岡)・伊勢(三重)忌部の祖
🔷摂社(下の宮)
御祭神
天富命(あめのとみのみこと) 天太玉命の孫神
天忍日命 (あめのおしひのみこと) 天太玉命の兄弟神
厳島社 (末社)
御祭神
市杵島姫命 (いちきしまひめのみこと) 海上交通を守護される海の神
琴平社 (末社)
御祭神
大物主神 (おおものぬしのかみ) 海上交通・航海安全の神
3.特徴
安房神社は、金運アップの神社として、注目されているようです。神社が位置する房総半島は東京湾という龍の宝玉をもつ「龍の手の爪」と言われ、「大事なものを離さない、大事なものを守る」という霊験があるそうです。
主祭神の天太玉命は、日本の産業創始の神様。あらゆるモノを生み出す優れた神様で、ものつくり、企業隆昌、事業繁栄、商売繁盛、技術向上、学業向上などにご利益があると言われています。
また、主祭神の天比理刀咩命は、夫婦円満の神様で、 櫛明玉命は、装飾・美術の神様。二柱の神様は、芸術の向上、美術系大学の合格祈願、デザイナー、装飾品、美容関係などに強いご利益があるそうです。
加えて、天日鷲命は、紡績業・製紙業の神様。 アパレル等の衣料品業界、製紙業界、新聞、雑誌、書籍関係などに優れた力をお持ちとか。
彦狭知命と、手置帆負命の二柱の神々は、共に林業・建築業・武具製造業の神として有名だそうです。農業、林業、建築業、不動産業、製造業、武術向上など、モノつくりにご利益があるそうです。
天目一箇命も、ものづくりの神様として有名で、金属鉱業の神様。 金属加工業、製鉄業など金属関係を扱う業種の分野に長けているそうです。
ご存知の方も多いと思いますが、 大物主神は、海上交通・航海安全の神様。 四国、香川県にある金毘羅宮から勧請されました。縁結び、恋愛成就、良縁祈願などにもご利益があるそうです。
4.見どころ
安房神社では、本殿のある本宮を「上の宮」、摂社は「下の宮」と称します。これは伊勢神宮の内宮・外宮に倣ったとする説があるそうです。
🔷本殿
明治14年(1881年)に造営。建築様式は、間口三間・奥行二間の神明造り。御屋根は檜皮葺きで、薄くはいだ檜の皮を重ね合わせている。平成21年(2009年)に平成大修造が実施され一新した。
🔷拝殿
昭和52年(1977年)の造営。鉄筋コンクリートによる神明造り。
🔷神饌所
明治41年(1908年)に造られ、神様に奉る神饌(お食事)を作るための場所。
🔷下の宮
養老元年(717年)に安房神社が現在の場所に遷座された時、天富命・天忍日命をお祀りする摂社として創建された。
🔷厳島社
拝殿前の巨大な海食崖にあるくり抜かれた穴。その中にお祀りされた末社。
🔷琴平社
讃岐の金刀比羅宮をお祀りする末社。
🔷手水舎
平成に行われた大修造の時に新築された。
🔷鳥居
白い鋼鉄製の神明鳥居。社号票は昭和8年に建立、東郷平八郎元帥が揮毫したもの。
🔷ご神木
槙の木のご神木。隣の木が幹から折れていたのを見て、ご神木の身代わりになったのかと思いました。5.まとめ↓に載せた安房神社・台風15号による被害の4コマ写真の右下がその折れた木です。
🔷その他
巨石の上に立つ日露戦役記念碑や、 戦没慰霊碑、海軍落下傘部隊慰霊碑がありました。一般的に戦没者の慰霊碑があることはあまり紹介されていないので、安房神社に行って驚きました。日本の歴史を振り返るとともに、自由に世界を行き来できる現在があるのは一体どうしてなのか考えさせられました。
5.まとめ
今回の房総半島・館山の安房神社はいかがでしたか? 私が館山に伺ったのは、台風15号で被災にあった数日後。JR線の運行が再開した翌々日でした。以前から安房神社へ行く予定を立てていたのですが、台風15号の影響を考えて一度は中止しようと思いましたが、ツイッターの投稿でメディアが全く千葉の被災を伝えていないことに驚き、取材も兼ねて行くことを決意しました。東京の隣であるにもかかわらず、報道されていないことに憤りを感じました。微力ではあっても、自分にできることはないかを考えて、できることを実行しに館山へ行きました。
伝統を重んじる神社建築は、宮大工など特殊な技術が必要ですし、近所の工務店などに頼んですぐに復旧できるというわけにもいかないでしょう。宮司さんらしき方とお話する機会があり、「これは東日本大震災のようなものですよ」とおっしゃっていました。メディアに報道されていなかったために、千葉に行かなければ、この言葉の信憑性の高さを理解できなかったかもしれません。
台風の影響で、停電、断水、情報通信、公共交通機関の運休、ガソリンスタンドの停電による閉鎖、コンビニやスーパーなど水・食料不足による休業などの被災を受けた千葉県の一部の地域について、9月9日時点でマスメディアは全く報じていませんでした。
非難するのはとても簡単で、今回の経験で私たちひとりひとりが学ぶことが沢山あったのではないでしょうか。近年の異常気象からみても、私たちが知っている台風は昨今、風速も大きさも速度も変わり、破壊力も大きいです。ここから先は、防災意識を正しく持ち、情報を得て知識を増やし、今後の対策を考え、自分たちができる範囲で備えていくことがとても大切だと思います。
メディアだけに頼るのではなく、今後は、SNSなどによる個人情報の重要性がさらに増してきます。今回の千葉の被災についても、私はSNSで知りました。並行して情報を得る習慣を日ごろから心がけるだけでも違うと思います。皆さんもどうぞ身の安全を守るための情報、備えをしてくださいね。
(つづく)