2019年にイラストレーター・グラフィックデザイナーで有名な和田誠さんが逝去されました。奥様が料理愛好家でシャンソン歌手の平野レミさんであることや『週刊文春』の表紙のイラストレーションを40年以上も続けたことなどは有名ですが、じつはその他にも映画監督、エッセイスト、作曲家、アニメーション作家、アートディレクターなどその創造性には境界がなく、多岐にわたる分野で活躍されたマルチクリエーターでした。
そんな和田さんの膨大な仕事の全貌を一望できる展覧会が10月9日、東京オペラシティ・アートギャラリーで開幕しました。83年間に渡る和田作品の集大成を披露したその展覧会に先日、行って参りました。
ユニークで好奇心溢れる和田さんの作品に癒されました。そこで今回は『和田誠展』の魅力についてご紹介します。まだ知られていない貴重な作品の数々についてもまとめています。
【和田誠展】約2800点の作品や資料を展示
多彩で膨大な作品を一挙公開
膨大な和田誠さんの作品が見られる本展。ビジュアル年表を軸に30のトピックにまとめられ、じつに見やすく構成されていました。マルチクリエイターとして様々な分野で活躍されてきた和田さんの全仕事が一気に俯瞰できます。
展示室に入って最初に目にするのは、天井まで続く著名人たちの『似顔絵』。国内外を問わず、さまざまな分野で活躍する人たちを描いた作品が壁一面に並べられています。
『似顔絵』といえば和田誠。上手に特徴をつかみ、独特のタッチで描かれた温かみのある作品に魅了されます。似顔絵を描くことを意識したのはどうやら小学生時代からのようです。
和田誠さんの仕事を『ビジュアル年表』ごとに観る!
最初の展示室には20本以上の四角柱が2列に並び、1柱の4面を利用して0歳から1年ごとにその年の出来事、仕事、そして作品について紹介しています。和田さん自身の人生を追体験しながら、順を追って第一線で活躍された作品の数々とともに昭和時代を振り返ることができます。
「和田誠になるまで」のコーナーでは、和田さんの制作の原点である4歳の頃に描いた絵物語から始まり、学生時代に描いた絵日記やスケッチ、マンガ、そして当時のデザイナーの登竜門と言われた日宣美(日本宣伝美術会)賞を受賞したポスターなど、今までに見たことがない貴重な作品が拝見できます。
和田誠さんの2800点の作品を『トピック』ごとに観る!
83年間に渡る和田さんの全作品を30のトピックに分けて紹介しています。子供の頃から絵を描くことが好きだった和田さん。私たちが知っている和田誠になるまでの道程や最盛期の活動など重層的に展示しています。
この『週刊文春』の表紙の数に圧倒されながら観ると、一見ランダムに展示されているように思うのですが、じつはこの展覧会のために、絵のモチーフごとにグルーピングをされているそうです。並び方にも工夫が見られます。
和田ワールドに触れてみよう!
①谷川俊太郎との絵本『あな』
和田さんはいろいろな作家と組んでたくさんの絵本を制作しましたが、殊に谷川俊太郎さんとのコラボは長く、多くの作品を共に制作しました。のちに和田さんは、谷川さんのテキストは過剰な説明がないので、のびのび描け、さらに新しい「自分を開発させてくれる」と語っています。
②『ぐうたら人間学』遠藤周作著
装丁の仕事はそれまでもやっていましたが、この遠藤周作の『ぐうたら人間学』をきっかけに装丁の仕事が増えたといいます。2000年に刊行された和田誠氏の作品集『時間旅行』には、装丁のコツについてこう語っています。
ぼくは「初校ゲラ(校正刷り)をよく読むことです」と答えています。文章の中に装丁のヒントになる要素が含まれているから。あとはそのヒントを活かして、丁寧に仕事をするだけです。
🔽和田誠氏の作品集『時間旅行』
③『デューク・エリントン』個展「JAZZ」より
この作品は、1992年に表参道のHBギャラリーで開催された和田さんの個展「JAZZ」に出品された『デューク・エリントン』。その個展を訪れた村上春樹さんが和田さんの作品を気に入り、『芸術新潮』誌面に和田さんの絵が使われることになったそうです。ジャズミュージシャンをテーマにした村上さんのエッセイとのコラボです。
和田誠さんの膨大な作品を俯瞰する!
Information
和田誠展
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
会期:2021年10 月9 日(土)~12 月19 日 (日)
開館時間:11:00-19:00 ※入場は18:30 まで
休館日:月
入場料:一般1,200円/大学・高校生800円/中学生以下無料
URL:http://wadamakototen.jp/
まとめ
今回は、『和田誠展・軽妙なタッチで魅了!約2800点の作品に迫る』をご紹介しました。膨大な和田さんの仕事量や質、種類の多さに圧倒されながらも活躍されていた昭和時代を体感できる貴重な機会でした。
ユニークで好奇心溢れるお人柄がひとつひとつの作品に染み込んでいるような和田さんの作品の数々、ぜひこの機会にじっくり鑑賞してみてはいかがでしょうか。
『和田誠展』は2022年から2023年にかけて熊本、新潟、北九州、愛知の巡回も予定されています。お近くの会場へぜひ足を運んでみてくださいね。
🔽合わせて読みたい!