8月8日からポーラ ミュージアム アネックスで開催している中村弘峰「SUMMER SPIRITS」 。若手の博多人形師で、約400年の歴史を誇る伝統工芸に新世代の発想を盛り込んだ斬新な作品が展示されています。今までの博多人形のイメージが彼の作品を観て無限の可能性を感じました。今回は、先日伺った展覧会の模様も併せて、現代風にアレンジされた中村さんの魅力的な作品の数々をご紹介します。
博多人形師・中村弘峰
1.展示会について
中村弘峰「SUMMER SPIRITS」
2019年8月8日(木)~9月1日(日) 11:00ー20:00(入場は閉館の30分前まで)
入場無料/会期中無休
※8月25日(日)のみ12:00開館予定
中村弘峰さんは、104年続く福岡の中村人形の4代目。東京藝術大学大学院を修了後、家業を継ぎながら、創作人形を制作しています。中村さんの中にはイメージがしっかりとあって、もし江戸時代の人形師が、私たちの時代にタイムスリップしたらどうなるか、という視点からものづくりをしているというのです。
今回の展覧会では、スポーツ選手から動物(干支)までの新作を中心に約40点が見られます。現代風にアレンジされたモチーフに、伝統の文様や色彩の美しさが融合された作品は、今までに見たことがない博多人形を堪能できます。斬新な発想と緻密なデザインに目を奪われます。
中村さんの制作には、最も大切な思いがあって、それは子供の成長を願うお雛様や五月人形に代表されるような、古来から日本人が人形に対して抱いてきた祈りや願いが込められていました。祈りや願い、それは今も昔も変わらない人間の普遍的な思いでした。
2.作品 (アスリートシリーズから動物シリーズまで)
40点ほどの作品の中で、個人的ではありますが、厳選したものをご紹介します。文様や色彩が豊かで、見れば見るほど面白みが増していく。そんな素敵な作品の数々です。
黄金時代 波千鳥(なみちどり)
Golden Age Plover on the Wave
ただ無心に何かに取り組んでいる時、それは彼にとっての
黄金時代だろう。美しく儚い時間を形にとどめたいと思った。
出典: 中村弘峰「SUMMER SPIRITS」
不動如山(うごかざることやまのごとし)
Immovable as the Mountain
いつもそうでありたいと思う。
出典: 中村弘峰「SUMMER SPIRITS」
一同、礼っ!
Everybody, Bow!
SUMMER SPIRITS展へようこそお越しくださいました。真夏の暑さをしばし忘れて小さな人形たちの世界でお遊びください。聖なるものは日常の中に不意に現れる。ほら、ここにも何かに気づいた子が一人いるよ。お時間許す限りごゆっくりご覧くださいませ。
出典: 中村弘峰「SUMMER SPIRITS」
Treasure Ship
積荷は空っぽのまま風に任せ進む風変わりな宝船。宝物は失ったのか、はたまた自ら捨てたのか。ただ、私はこの船が好きだ。どんな荒波もこえてゆく術を既に知っているという気がするから。宝物ならまた探せばいい。
出典: 中村弘峰「SUMMER SPIRITS」
3.中村弘峰(中村人形4代目)
プロフィール
- 1986年福岡県福岡市生まれ
- 2009年東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
- 2011年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
- 2011年人形師で父の中村信喬に師事
- 福岡県太宰府天満宮干支置物制作
- 博多祇園山笠土居流 舁山制作
- パブリックコレクション/モニュメント古代力士像住吉神社/福岡
個展
- 2014 人形師中村弘峰展「スサノオ〜神々の肖像〜」 ギャラリーマルヒ/東京
- 2018 「Tiny Spirits」現代陶芸釉里/福岡
- 2018 「MVP(Most Valuable Prayers)」美術画廊×日本橋高島屋/東京
グループ展
- 2014 MOA岡田茂吉賞新人賞部門招待出品「蒼森(そうしん)」 MOA美術館/静岡
- 2012 豊福智徳プロジェクト「風化物」出品 太宰府館/福岡
- 2011 帰ってきた りったいぶつぶつ展 ~現代作家による立体アート~ Bunkamura Gallery/東京
- 2010 「東方三博士の彫刻」展 藝大アートプラザ/東京「PLAYROOM~ゲエムは生活の頂点だった~」 Gallery artsynapse/東京
- 2009 「アトリエの末裔あるいは未来」 台東区書道博物館/東京「彫刻の五・七・五」 沖縄県立芸術大学/沖縄
受賞
- 2019 第54回 西部伝統工芸展 日本工芸会賞受賞
- 2017 伝統工芸創作人形展 in 金沢 中村記念美術館賞受賞 陶彫彩色「瀧」
- 2016 第3回金沢・世界工芸トリエンナーレ コンペティション部門 優秀賞受 「The Otogi League Allstars: Momotaro」
- 2015 第50回西部伝統工芸展 福岡市長賞受賞 陶彫彩色「翠原」(すいげん)
- 2014 第49回西部伝統工芸展 初入選 日本工芸会賞受賞 陶彫彩色「烏之杜」(うのもり)
- 2013 第60回日本伝統工芸展 初入選 新人賞受賞 陶彫彩色「蒼森」(そうしん)
- 2009 日本芸術センター第1回彫刻コンクール 審査員賞受賞 三菱地所賞受賞 (東京芸大卒業制作)
- 2008 第3回藝大アートプラザ大賞 大賞受賞
- 2007 第2回藝大アートプラザ大賞 準大賞受賞
- 2006 第1回藝大アートプラザ大賞 大賞受賞
Hiromine Nakamura′s Plofile
A fourth generation Japanese doll maker, Hiromine Nakamura (b.1986) was born and raised in Fukuoka, Japan. Trained in traditional fine arts, specializing in woodcarving and ceramics, Hiromine challenges old conventions, with a fresh approach to sculpture, painting and calligraphy.
Education
- 2011 Tokyo University of the Arts and Music. M.A. Fine Art Sculpture
- 2009 Tokyo University of the Arts and Music. B.A. Fine Art Sculpture Solo
Prize and Exhibition
- 2016 Received the award of Nakamura Memorial Museum of the Figural Craft Competition in Kanazawa
- 2016 Received Merit Award of 2017 Kogei World Competition in the 3rd Triennale of Kogei in Kanazawa
- 2015 Selected for the 50th West Japan Arts and Crafts Exhibition, and received the Mayor of Fukuoka Award
- 2014 Selected for the 49th West Japan Arts and Crafts Exhibition for the first time, and received the Japan Kogei Association Award
- 2013 Selected for the 60th Japan Traditional Kogei Exhibition for the first time, and received the Best New Artist Award
- 2014 " SUSANOO ~ Portraits of the Gods ~ " Gallery Maruhi / Tokyo
参照:中村弘峰ウェブサイトより
ポーラ ミュージアム アネックス
- 所在地:〒104-0061
東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階 - 電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 開館時間:11:00-20:00(入場は19:30まで)
- 休館日:会期中無休
- 入場料:無料
4.まとめ
中村弘峰さんの「SUMMER SPIRITS」 はいかがでしたか?
日本の伝統工芸と現代のアスリートを掛け合わせた作品はとても新鮮で、時代とともに日本の古典は若手の力でこのように進化してきたのだと改めて実感しました。今回の展覧会を拝見して思うのは、今の作家たちが、次世代の若者たちへ確実にボールが投げられたということです。
私たちの文化は、こうして昔から綿々と受け継がれて、進化しながら次の世代に手渡されていくのです。その継承を途切れさせないために、これからも日本の文化を広める活動を続けていくことが重要だと思いました。入場料が無料なので、ぜひこの夏、足を運んでみてくださいね。