熱田神宮といえば、三種の神器のひとつ、草薙剣(くさなぎのつるぎ)を祀る神社として有名な名古屋の観光スポット。古くから「熱田さん」と親しまれている熱田神宮ですが、日本の歴史をさかのぼると、さまざまな逸話が残されています。
あの信長も崇敬していた熱田さん。そこで、今回は境内にある「信長塀」の歴史に触れながら、さらなる熱田神宮の魅力に迫りたいと思います。
熱田神宮の魅力とは?
1.熱田神宮とは?
熱田神宮は、ご祭神・熱田大神(あつたのおおかみ)が祀られた本宮をはじめ、境内外には43社があります。境内は約6万坪の広さで、年間700万人以上の参拝者が訪れるそうです。有名な草薙神剣は本宮に祀られていますが、その他にもお社やご神木などのご利益を求める人が世界中からやってきます。
本宮に祀られている熱田大神とは、草薙神剣を御霊代(みたましろ)とする天照大神(あまてらすおおかみ)のことをいいます。 御霊代とは、祖霊の依り代(よりしろ)、もしくは仏教で言う位牌にあたります。
2.熱田神宮の由来
熱田神宮の創祀は、1900年前の第12代景行天皇の御代、草薙神剣と深い関係があります。父である景行天皇から信任を得た皇子の日本武尊(やまとたけるのみこと)は東征します。ところが神剣を置かれたまま亡くなられました。尊のお妃だった宮簀媛命(みやすひめのみこと)は、尊のご遺志を重んじ、その神剣を熱田の地にお祀りになったのです。これが御鎮座のはじまりでした。
ご祭神
- 熱田大神
相殿神
- 天照大神
- 素戔嗚尊(すさのおのみこと)
- 日本武尊
- 宮簀媛命
- 建稲種命 (たけいなだねのみこと)
天照大神は、皇室の皇祖神であり、国民の総氏神とされる神様です。また、相殿神は「五神(ごしん)さま」と呼ばれ、草薙神剣とゆかり深い神々で、宮簀媛命、建稲種命は尾張氏の遠祖として仰がれる神々です。
3.樹齢1000年の大楠
境内には多くの楠がありますが、その中でとてつもなく大きい(おおくす)楠があります。 手水舎の北側にあり、樹齢は約千年になるそうで、 弘法大師がお手植えしたとも言われています。大楠に生えた苔が長い年月を物語っていますね。
この大楠の内部には空洞があり、そこに蛇が住んでいると言われています。毎日、木の根元には卵が供えられ、卵を食べに来た蛇を見ることができたら金運アップするとか。
4. 日本三大土塀として有名な「信長塀 」
熱田神宮の公式サイトによると、永禄3年(1560)織田信長が「桶狭間の戦い」に出陣の際、熱田神宮に必勝祈願をしてみごと大勝したことから、そのお礼に奉納したのが、築地塀(ついじべい)という泥土を固めて作った塀でした。
土と石灰を油でつき固めて瓦を厚く積み重ねたもので、兵庫にある西宮神社の大練塀 (おおねりべい) 、京都にある三十三間堂の太閤塀とともに日本三大土塀の一つとして有名です。
さて、信長が「桶狭間の戦い」の勝利のお礼として寄進したことから名付けられたこの信長塀。なんと永禄3(1560)年に造られてから一度も崩れていないこということもあり、「建築の無事」や「出世運」などのご利益を期待する人もいるそうです。
当時、信長が寄進した 「信長塀」は、境内の周りを囲む約400mの塀でした。現在はその一部が現存しています。
5.信長塀からの言い伝えや伝承
桶狭間の戦いは当初、ほとんど勝ち目のない戦だったようです。ところが 信長塀が寄進された理由のひとつは、 永禄3年(1560)、2万5千人以上の今川の軍勢に対し、織田の軍勢はたった数千人程度で敵を倒し、勝利したからでした。
当日の早朝、織田軍はわずかな兵を率いて熱田神宮に到着。そこで 『この戦は多勢に無勢、苦しい戦いになるだろう。熱田大神のお力をお借りして、是非勝利したい』という戦勝祈願の願文を作らせ、御神前に躓き、集結した兵の目前で読み上げたといいます。熱田神宮の大宮司の千秋氏や加藤氏の手勢は織田軍についていました。当時の言い伝えで、本殿の奥から、甲冑の音が鳴り、二羽の白鷺が戦旗の先に飛ぶ姿を見て、勝利を感じたといいます。
熱田神宮を後にした織田軍は、今川軍の本陣が置かれた桶狭間に向かい、 そのすぐ近くの太子ヶ峰に攻撃の機会を待ちました。そうこうしているうちに、猛烈な雨が降り出し、信長は2千人の軍勢を率い今川軍本陣に奇襲をかけたのでした。 その時、今川軍は桶狭間の本陣で、暫しの休憩を取っていました。
桶狭間での戦勝後、信長は清洲城への帰途の途中で、熱田大神の御加護に感謝するため再び熱田神宮に参拝し、神馬1頭を奉納、その後にあの「信長塀」を奉納したのでした。弟の信行を暗殺する冷酷な信長ですが、神仏に対する敬意を忘れない人でもありました。
桶狭間の戦いで勝利を収めた織田信長。戦国時代の重要な転機となったことは言うまでもありません。そして、神仏を信じないと言われている信長にとって熱田神宮は、信仰を篤くせざるを得ないエネルギー溢れる特別な存在だったに違いありません。
6.二十五丁橋(にじゅうごちょうばし)
中央が盛り上がり弓状に美しく反った形状の太鼓橋です。25枚の板石でできたこの橋、かつては西行法師が腰かけたこともあると言われています。橋の真横から見ると美しいアーチになっているのが分かります。
7.宝物館
入り口に入ってすぐに「真柄太刀(まがらたち)」と呼ばれる大太刀が出迎えてくれます。221.5cmもある刃長はなんと通常の刀の約3倍だとか。元亀元(1570)年、姉川の合戦で戦死した真柄十郎左衛門の遺物です。
また宝物館には皇室をはじめ、全国から寄せられた奉納品6千点以上が収蔵展示されています。そのうちの約170点が国及び愛知県指定文化財に登録される貴重な品々。刀剣類、古神宝類、十二の舞楽面、菊蒔絵手筥、熱田本日本書紀、法華経涌出品などが宝物館で公開されています。
まとめ
自然豊かな熱田神宮は参道を歩いているだけでも神聖な気持ちになれます。1900年の歴史を感じながら境内を散策するのも楽しいですよ。また、樹齢千年を超える大楠や信長が寄進した信長塀など、貴重な宝物を見られるチャンスです。これを機会に熱田神宮を訪れてみてはいかがでしょうか。
参拝しようと本宮の前に行くと人だかりが…。いったい何が?その答えは次回にご紹介します。お楽しみに♪