6月30日は夏越の祓(なごしのはらえ)という神事の日。夏越の祓とは、1年の半分である6月末日(晦日)に執り行われ、身心の罪や穢れを取り除き、祓い清める儀式です。
神社の参道に取り付けられた茅(ちがや)で作られた輪を何度も見かけたことがあったのですが、今回は近くの神社で茅の輪くぐりを初体験しました。夏越の祓の由来と意味も併せてご紹介します。
夏越の祓とは?
1.茅の輪とは?
茅の輪(ちのわ)とは、参道などの結界内に取り付けられた茅の草で編んだ直径数メートルの輪のことで、それをくぐることで1年の前半の心身を清めて災厄を祓い、無病息災を祈願するというものです。毎年6月30日の夏越の祓で行われる日本の風習として定着しています。
茅の輪くぐりの由来は日本神話のスサノオノミコトの御代に遡ります。
2.茅の輪の由来
茅の輪くぐりは備後国の蘇民将来(そみんしょうらい)という貧しいのにもかかわらず宿を探すスサノオノミコトをもてなしたという逸話が起源 でした。「備後国風土記」には、旅をしていた武塔天神(むとうてんじん)が、その里で一番裕福な 巨旦将来(たんしょうらい) に一晩の宿をお願いしたところ断られてしまいます。 巨旦将来に促され、命は蘇民将来を頼っていくと、快くもてなしてくれました。
武塔天神は、じつは須佐雄能神(すさのおのかみ)であることを蘇民に明かし、疫病を逃れるために茅の輪を腰につけなさいと教えました。翌日、蘇民は里の家々を見て歩くと、どの家も疫病で倒れ、誰ひとり姿を見せませんでした。
「これはどうしたことだろう。我が家だけが助かったのか…。なんと有難いことよ」。身をもって命のお力に驚いた蘇民は、茅の輪のおかげで助かったことに心から感謝します。
江戸時代を迎える頃には、現在のように茅の輪は大きくなり、参道や鳥居などに取り付け、くぐり抜けるものになったといわれています。
3.茅の輪のくぐり方
茅の輪のくぐり方は、唱え言葉を唱えながら、8の字に3度くぐり抜けるのが一般的のようです。さっそく私もご近所の神社に行って、看板に記された通り挑戦してみました。その記されていたくぐり方をご紹介しておきますね。
🔷唱え歌を黙唱しつつ図のようにくぐります。
唱え言葉
水無月(みなずき)の夏越(なごし)の祓ひする人は千歳(ちとせ)の命延(いのちの)ぶというなり
- 正面にて一礼。 茅の輪 をくぐり左へ回ります。
- 正面に至り一礼。 茅の輪 をくぐり右へ回ります。
- 正面に至り一礼。もう一度くぐりそのまま社殿へ進み参拝。
手順通りに茅の輪をくぐることができましたが、唱え言葉が覚えられないので、正面に表記されているところに戻るたびに心の中で唱えていました。
ちなみに「水無月の夏越の祓ひする人は千歳の命延ぶといふなり」という唱え言葉は室町時代の『公事根源』からのものです。
興味深いのは、茅の輪くぐりの唱え言葉は、地域や各神社で異なるようなのです。神社ごとに異なるのは、ご祭神が違うからだそうです。 茅の輪くぐりの方法は、各神社で尋ねられるのがいいかもしれません。
茅の輪をくぐり、社殿で参拝した後の爽快感は最高でした。初めての体験でしたが、連綿と受け継がれているこの神事をひも解くことで、自分の国の歴史を少し知ることができてとても有意義でした。学校が教えてくれない日本の伝統文化がここにもあって少し淋しい気持ちにもなりました。
4.大祓とは?
6月30日の夏越の祓は、12月31日の年越の祓と対になる神事です。この2つのを合わせて「大祓(おおはらえ)」と呼びます。どちらも災厄を祓い清める儀式です。
大祓は昔から継承されてきた神事のひとつで、701年には宮中の年中行事として執り行われてきました。伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の禊祓(みそぎはらい)を起源としています。
5.茅の輪くぐりのまとめ
夏越の祓は年越の祓とともに昔から執り行われてきた大切な神事でした。身心の穢れや罪や過ちを祓い清める儀式。残りの半年を有意義に過ごすために、お近くの神社の茅の輪をくぐってみてはいかがでしょうか。