『壽・初春大歌舞伎』絵本太功記のつづきです。2幕目は『勢獅子』。華やかな芸者鳶たちの軽快な踊りが楽しめます。
勢獅子 その②
鳶頭 梅玉
鳶頭 芝翫
鳶の者 福之助
鳶の者 鷹之資
鳶の者 玉太郎
鳶の者 歌之助
芸者 雀右衛門
芸者 魁春
【ストーリー】華やかな江戸の大祭
江戸三大祭のひとつ、日枝神社の山王祭で賑わう街。町内にはほろ酔い気分の鳶頭や芸者たちが勢ぞろい。鳶頭たちは曽我兄弟の仇討の物語、江戸前の威勢のいい獅子舞を賑やかに披露してくれます。
勢獅子は江戸っ子の風情をさまざまな踊りで魅せる、粋でいなせな常磐津(ときわず)の舞踊です。ゆったりとした重厚な曲調が特徴で、舞踊の伴奏は出語りと云って太夫と呼ばれる語り担当と三味線方から構成されます。歌舞伎では太夫と三味線方が舞台上に設けられた席に出て観客に姿を見せて語るので一層迫力があります。
浄瑠璃の一派【常磐津節】
ちなみに常磐津とは正式には常磐津節(ときわずぶし)と云い、浄瑠璃の一派。宮古路豊後掾(みやこじぶんごのじょう)が創始した「豊後節(ぶんごぶし)」から派生したものです。豊後掾は、江戸で大変な人気を得ましたが、作品には心中ものが多く、風紀を乱すという理由から幕府に禁止されてしまいます。豊後掾が江戸を去り、弟子の文字太夫(もじたゆう)が起こしたのが「常磐津節(ときわずぶし)」なのでした。
縁起の良い新春の演目
冒頭で紹介しました日枝神社のお祭り・山王祭に顔を見せた芸者と鳶頭たちが、ほろ酔い加減で賑やかに踊るのですが、歌舞伎座の舞台はじつに新春にふさわしい華やかさでした。そして見せどころは手古舞たちの踊る勢獅子。それに加えておどけたぼうふら踊りやひょっとこ踊りなど変化に富んだ見世物は、江戸時代の雰囲気を味わえ、最初から最後まで飽きさせないみごとな演目でした。つかの間の江戸っ子の風俗を楽しみました。
獅子舞は長い毛を生やした連獅子や鏡獅子のようなものではなく、私たちがよくお祭りで拝見する獅子舞そのもの。イメージは吉原で、賑わった吉原のお祭りのようすを楽しむ踊りなのだそうです。
鳶頭には梅玉さんと芝翫さん。この二人の息がじつにぴったりで、軽やかな梅玉さんと、堅実な芝翫さんとのコラボ、十分に堪能しました。
そして芸者の雀右衛門さんと魁春さんお姿は優雅で素敵でした。あの艶やかさは女性も顔負けですね。また若者の鳶たち、福之助さん、鷹之資さん、玉太郎さん、歌之助さんたちはとても初々しく、踊っている姿を通じて鍛錬された肉体美が感じられるほどでした。
(つづく)