近頃、すっかり秋めいてきました。夏休みには海水浴やお祭り、そして花火大会など楽しい時間を大切な人たちとともに過ごしたことでしょう。打ち上げ花火のように有意義な時間ほどあっという間ですね。
相反して秋が深まるごとに静寂な空気が漂い、色付く街路樹を愛でて、ふと物思いにふけたくなります。ロマンティックな秋はいつの時代も人を詩人にしてしまいます。
そこで、今回はそんなロマンティックな夜をさらに盛り上げてくれそうな秋にピッタリのジャズナンバーをご紹介します。
【秋に聴きたいジャズ】おすすめの名曲
秋の夜長にジャズは打って付け。物悲しい秋の雰囲気によく合います。ジャズと言えば、実際に秋をテーマにしたスタンドナンバーが数多くあり、多くのアーティストが「秋に聴きたいジャズの名曲」を手掛けています。
その中で、特におすすめナンバーを5曲紹介しますので、ぜひお楽しみください。
🚩5位 Nat King Cole Sing/George Shearing Plays
ナット・キング・コール シング、ジョージ・シアリング プレイズ
伝説のジャズボーカリストのナット・キング・コール。彼の歌声はいつ聞いても暖かく、心地よい バリトンで多くのファンを魅了しています。
このアルバムはポップ色が強いですが、ジョージ・シアリングの滑らかで優しいピアノとコールの美しいヴォーカルのコラボは実に見事で、まさに秋の雰囲気にピッタリ。フランク・シナトラよりナット・キング・コールの方が好みという音楽関係者も多いとか。
秋におすすめの曲はやはり、1曲目の『September Song』。オシャレで控えめなコールの歌い出しに思わずうっとり、脱帽です(笑)。いつまでも聴いていたくなるほど心地良さに包まれます。
4曲目の『Let There Be Love』もおすすめの曲。聖書の「光あれ」という神様の言葉を題材にしています。また、8曲目の『Fly Me to The Moon』は超名曲ですが、コールの歌声にまた心酔してしまいそうです。
コールはアラバマ州の牧師の子として生まれ、シアリングはイギリス生まれで生まれた時から盲目だったそうです。コールは黒人、シアリングは白人と相反した関係ですが、二人の個性は見事なハーモニーを生み出し、どの時代にも愛される付加価値のある作品を創造したと言えるでしょう。
🔽Nat King Cole Sings George Shearing Plays
- September Song
- Pick Yourself Up
- I Got It Bad (And That Ain't Good)
- Let There Be Love
- Azure-Te
- A Beautiful Friendship
- Fly Me To The Moon
- Serenata
- I'm Lost
- There's A Lull In My Life
- Don't Go
- Everything Happens To Me
- The Game Of Love
- Guess I'll Go Back Home
🚩4位 Sarah Vaughan at Mr. Kelly‘s
1940年から80年代まで活躍したモダンジャズの女王と言われたサラ・ヴォーン。ジャズ史上、三大女性ボーカリストの1人に数えられています。ジャズだけでなく幅広い音楽性を持ち、ピアノも相当上手だったそうです。
彼女の円熟した歌声は迫力があり、聴きごたえがありますが、1曲目の『September In The Rain』はまさにサラに奥行きのあるヴォーカルにピッタリの曲。灼熱の夏が終わり、秋の臨場感に酔い痴れてしまいそうです。
因みに、『September In The Rain』は、1937年の映画『Melody for Two』で、ジェームス・メルトンが紹介した曲で、ハリー・ウォーレンとアル・デュビンによって書かれました。それ以来、多くのアーティストがこの曲をカバーし、今日もスタンダード曲として親しまれています。
- September In The Rain
- Willow Weep For Me
- Just One Of Those Things
- Be Anything But Darling Be Mine
- Thou Swell
- Stairway To The Stars
- Honeysuckle Rose
- Just A Gigolo
- How High The Moon
- Dream
- I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter
- It's Got To Be Love
- Alone
- If This Isn't Love
- Embraceable You
- Lucky In Love
- Dancing In The Dark
- Poor Butterfly
- Sometimes I'm Happy
- I Cover The Waterfront
🚩3位 Ella Fitzgerald/September Song (Remastered 2015)
🔽Ella Fitzgerald Sings Songs from Let No Man Write My Epitaph
エラ・フィッツジェラルドは3大ジャズヴォーカリストの一人で、サラ・ヴォーンとカーメン・マクレエに並ぶ黒人女性ヴォーカリスト『三銃士』としてモダンジャズの時代に不動の人気を博してきました。ビリー・ホリデイが入ってないのは不思議な気もします。
アメリカのジャズ専門誌『ダウンビート』の批評家投票で、女性ジャズヴォーカリスト部門において、エラは1952年から71年までの20年間、連続してトップの座を守り続けてきたという圧倒的な功績が彼女の凄さを物語っています。
おすすめの曲はなんと言っても『September Song』。静寂な秋の夜にぴったりなスロージャズです。フランク・シナトラもよく歌っていた、アメリカではとても有名なナンバーです。
エラは1917年にアメリカ東海岸のバージニア州で生まれました。エラの生後間もなく、両親は離縁してしまい、母親に連れられてニューヨークで幼少期を過ごしました。エラが14歳の時に母親と死別。彼女は天涯孤独の身となってしまいます。ビリー・ホリデイもかつてそうだったように、この時代の黒人社会の闇もあり、エラも幼少期は生活に困窮し、大変苦労されたようです。
そんな彼女が17歳の時、アポロ劇場主催のアマチュアコンテストで優勝します。それがきっかけでプロデビューし、ジャズ・ヴォーカルの代表的存在に上り詰めるまで数々の素晴らしいアルバムを世に送り出しています。
エラの声量や声質の清涼感は圧倒的で、クリアで分かりやすいのが心地良いですね。いつまでも聴いていたくなるほど親しみやすく、サラのよりモダン、ビ・バップ的なのに対して、エラはスイングミュージック。世代の違いもありますが、安定感のあるエラの歌声は気さくであり、可愛らしさも滲ませてくるところは、圧巻で人気を博すのも当然と言えるでしょう。
他にも『Misty』はおすすめで、しっとりと歌いこなすエラのヴォーカルに酔いしれてしまいます。ジュリー・ロンドンもカバーしている曲ですが、聴き比べてみるのも楽しいかもしれません。
🔽Ella Fitzgerald Sings Songs from Let No Man Write My Epitaph
- Black Coffee
- Angel Eyes
- I Cried for You
- I Can't Give You Anything but Love, Baby
- Then You've Never Been Blue
- I Hadn't Anyone Till You
- My Melancholy Baby
- Misty
- September Song
- One for My Baby
- Who's Sorry Now?
- I'm Getting Sentimental
- Reach for Tomorrow
🚩2位 Stan Gets Plays/George Shearing Plays
私の大好きなテナーサックス奏者、スタン・ゲッツ。今回おすすめするのは、ロマンティック且つスローテンポのスタンダードを集めた初期の名盤です。秋にぜひ聴いてほしいのは、3曲目の『Tis Autumn』。ゲッツの凄さは、彼の奏でる甘美なメロディ。聴き続けていくうちに豊かなトーンを展開し、さらには美しいアドリブにまで昇華させてしまうところなんです。1940年代から1991年に亡くなるまで、第一線で活躍し続けてきたジャズの巨匠と言われたゲッツ。誰も真似できない領域まで到達したジャズ界の星です。いつ聴いても裏切らないゲッツの演奏をお楽しみください。
- Stella by Starlight
- Time on My Hands
- 'Tis Autumn
- The Way You Look Tonight
- Lover Come Back to Me
- Body And Soul
- Stars Fell on Alabama
- You Turned the Tables on Me
- Thanks for the Memory
- Hymn on the Orient
- These Foolish Things
- How Deep Is the Ocean
👑1位 Harry Connick, Jr. / When Harry Met Sally
秋の景色の広がったアルバムのジャケット。秋の定番である『Autumn In New York』が収録されています。1989年に公開されたロマンティック・コメディ『When Harry Met Sally』(恋人たちの予感)映画のサウンドトラックですが、純粋にジャズ名盤として堪能できます。個人的に映画も音楽も大好きで、何十年経った今でも色褪せることのない素晴らしい作品です。
主演はビリー・クリスタルとメグ・ライアン。この映画でメグ・ライアンの人気は不動のものとなりました。ビリーは十数年前にロサンゼルスのお寿司屋さんで見かけたことがあったのですが、スクリーンで観たままの小柄な方でした。今となっては話しかければ良かった(涙)と後悔してます。
俳優としてエミー賞、ミュージシャンとしてグラミー賞を受賞し、マルチ楽器奏者であり、シンガーソングライターとして幅広い活躍を続けているハリー・コニック・ジュニア。当時、全くの無名だったハリーはなんと21歳でした。映画監督のロブ・ライナーに見込まれて大抜擢され、実年齢を忘れるぐらい素晴らしい才能を発揮しています。
ハリー・コニック・ジュニアのヴォーカルは実に都会的で洗練されていているにも拘らず、技巧的過ぎず、バランスよく自然体なのが驚きです。アルバムの他の曲はスタンダードのもばかりですが、21歳の時に、アレンジが素晴らしく、何度聴いても飽きさせないアルバムを制作したとは…。圧倒されます。『It Had To Be You』やスイングが効いた『Stompin’At The Savoy』などもおすすめです。
🔽Harry Connick, Jr. / When Harry Met Sally
- It Had To Be You (Big Band and Vocals)
- Love Is Here To Stay
- Stompin' At The Savoy
- But Not For Me
- Winter Wonderland
- Don't Get Around Much Anymore
- Autumn In New York
- I Could Write A
- Let's Call The Whole Thing Off
- It Had To Be You (Trio Instrumental)
- Where Or When
◇まとめ◇
『秋に聴きたいジャズおすすめの名曲5選』は如何でしたか? 焚火の火や暖炉を囲みながら聴くのも良いかもしれません。あまりジャズに馴染みがなくても、ポップ色の強いものもありますので、ぜひお試しくださいね。きっと素敵な夜を演出する手助けをしてくれる名曲ばかりです。Enjoy!
🔸Author:あみ(Ami)🔸
メディアプロデューサー/英語講師
日本の私立短大家政科卒。証券会社に就職後、渡米。大学でテレビ、ラジオ、及び映画制作を学ぶ。卒業後、日本のテレビ・ラジオ・出版などマスメディアの仕事に従事。趣味は日本文化・伝統芸能・ヨガ・旅行・料理。近年は心理学・歴史・神社仏閣の造詣を深める。2019年、神社検定弐級合格。