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待望の高畑勲展へ 東京国立近代美術館10月まで開催!

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7月から東京国立近代美術館で開催している「高畑勲展―日本のアニメーションに遺したもの」 。先日、その展覧会に行ってきました! 

本展では、2018年4月に亡くなられた高畑勲監督の今までの活動・創作の軌跡を辿ることができます。そこで今回は、高畑勲展をご紹介します。懐かしい子供の頃に観た名作が目白押しですよ。

待望の高畑勲展

竹橋にある東京国立近代美術館

『平成狸合戦ぽんぽこ』『かぐや姫の物語』 などの映画作品や『アルプスの少女ハイジ』 をはじめとするテレビシリーズなど、次々に手掛けてきたアニメーション作品には、私たちの想像を遥かに超える膨大な時間と労力がありました。

幼少期の私が好きだった作品がどのように作られたのか知れたことで、さらに興味深いものになりました。今回は半世紀以上にわたって活躍された高畑監督の展覧会のご紹介です。

1.展覧会概要

「高畑勲展―日本のアニメーションに遺したもの」

Takahata Isao 「A Legend in Japanese Animation」

  • 東京国立近代美術館(東京)
  • 2019年7月2日(火)-2019年10月6日(日)
  • 10:00~17:00(金、土曜日は21:00まで) ※入館は閉館30分前まで

高畑監督がどのようにしてアニメーションを制作してきたのでしょうか。1000点以上の作品資料からその活動を辿ります。高畑監督がどのように演出してきたのか。未発表の絵コンテや制作ノートなどの貴重な資料に加え、制作者たちとのやり取りを記録したメモなどを通じて多面的に高畑作品の魅力に迫ります。

2.見どころ

高畑監督の1000点以上に及ぶ作品資料から創作の軌跡を紹介。絵を描かない高畑監督の演出術とは?

東京国立近代美術館で行なわれいる本展の企画は、高畑監督の生前から準備されていました。その流れで今回の展覧会はというと、惜しくも昨春、82歳で亡くなられた高畑監督の追悼展という形になってしまいました。

展覧会は4つに分類され、年代ごとに代表作を辿りながら高畑監督が挑戦したそれぞれの作品の演出課題が明らかに。

高畑さんのアニメーション作品は既存のアクションやファンタジーものとは毛色が違います。できるだけ私たちの日常生活の延長線上に視点を置き、実は見過ごしてしまいがちな大切なこと、普遍的なことを丁寧に描写して表現したリアルな人間ドラマでした。

盟友である製作スタッフたちとの共同作業の中で、高畑監督が遺した膨大な資料には、綿密な計算と緻密な言葉によって演出を行っていきます。

高畑さんの手書きのノートや資料を見ると、試行錯誤しながらも頭の中にあるものをひとつひとつ丹念に書き出しているような感じでした。思い描くイメージをどうやって的確に製作スタッフに伝えるのか。それをどうアニメーションの表現に結実させるのか。

そのために、昨今ビジネスでは当たり前のように使用していいるグラフやチャートを駆使して、明確に指示やアイデアを記していました。絵を描けない高畑さんならではの演出方法だと思いました。高畑さんは、The 職人でした。

高畑勲展の図録

その① 第1章『出発点・アニメーション映画への情熱』

本展は4章に分かれていると先ほど説明しましたが、第1章の出発点では、高畑監督の年譜が紹介され、初期の作品である『やぶにらみの暴君』『安寿と厨子王丸』『わんぱく王子の大蛇退治』『狼少年ケン』『太陽の王子ホルスの大冒険』の資料がずらりと展示してありました。

安寿と厨子王丸

わんぱく王子の大蛇(おろち)退治

テレビまんが放送開始50周年記念企画第1弾 狼少年ケン

太陽の王子 ホルスの大冒険

また、会場には、壁に印字された高畑さんの言葉や、室内に設置された本人の画像や肉声が流れています。第1章ではこんな言葉が引用されていました。

アニメーション映画で「思想」が語れるんだ。「思想」を「思想」として語るというより物に託して語れる

出典: 第1章『出発点・アニメーション映画への情熱』 の展示より

第1章の「出発点」では、あまり知られていない高畑さんが作成したテレビ向けの『ドラえもん』企画書(本物)や宮崎駿とともに監督を務めたテレビシリーズ『ルパン三世』の関連資料も展示されていました。あの高畑さんがドラえもんの企画書を頼まれて書いていたとはホントに驚きでした。

本展の目玉となるのが、 高畑さんが東映動画に入社してまもなくのころに書かれた「ぼくらのかぐや姫」という企画メモです。そこには、「Drôle de drameを音楽劇に仕立てる」 とか、「絵巻物をよく研究して、その描法を生かすこと。特にトレス線を活用するなど」 など、さまざまなアイデアがありました。

結局応募しなかったのですが、『竹取物語』をいかに構成するかという企画メモは、半世紀以上の月日を経て、高畑監督ご自身が『かぐや姫の物語』を作る結果となりました。かぐや姫は、高畑さんのキャリアの始まりから終わりまでを繋ぐ貴重な物語であり、高畑監督の『かぐや姫の物語』 が最後の作品となりました。

その② 第2章『日常生活のよろこび・アニメーションの新たな表現領域を開拓』

第2章の「日常生活のよろこび」では、東映動画を辞めた高畑さんは新境地で、『アルプスの少女ハイジ』(1974年)にはじまり、

『母をたずねて三千里』(1976年)、『赤毛のアン』(1979年) などのテレビシリーズを手掛けていきます。

本展では、 新たに発見された絵コンテや台本をもとに、若き日の高畑さんが遺した軌跡を辿っていました。

展示品はアイデアスケッチ、絵コンテ、設定画、背景画をはじめ、高畑監督が登場人物の人間関係と心理状況を示すために制作したテンション・チャートは見どころのひとつです。スタッフと共有した図表や、登場人物の役柄と性格を表した一覧表も当時の高畑さんの仕事ぶりを知る大切な資料です。

「子供の心の解放」することをテーマに、宮崎駿と共に手掛けた『パンダコパンダ』や『アルプスの少女ハイジ』

高畑さんは、毎週1話を完成させなければならない時間的制約の状況下で、表現方法を凝らし、生き生きとした日常生活を描くように、つねに丹念に描写することに努めました。子供たちに寄り添い、子供たちの心を解放するアニメーションに取り組んだ高畑の創作を紹介しています。高畑監督の遺品から新たに発見された『パンダコパンダ』『アルプスの少女ハイジ』の資料も公開。

「子どもの心を開放し、生き生きさせるような本格的なアニメーションシリーズを作るためには、どうしなきゃいけないのかということを一生懸命考えた」

出典: 第2章『日常生活のよろこび・アニメーションの新たな表現領域を開拓』

また、宮崎駿さんが手掛けた『パンダコパンダ』のレイアウトや、高畑さんと宮崎さんによる『アルプスの少女ハイジ』のオリジナル絵コンテが展示されています。

高畑勲監督作品集 

もう一つの見どころは、井岡雅宏さんによる『アルプスの少女ハイジ』の背景美術。そのまま家のリビングに一枚飾りたいくらい、息をのむほど素晴らしいアルプスの雄大な自然が描き出されていました。制作スタッフが実際にアルプスへロケーション・ハンティングに行った後、井岡さんは美術監督に就任したそうで、ロケハンの写真資料をもとにあれだけの鮮やかな背景を描いたとは驚きです。ちなみに、スタッフがスイスへ行ったことは日本のアニメで初の海外ロケハンだそうで、46年前のことです。

また、ハイジがブランコに乗るシーンや雲に乗る場面など、高畑さんが思い描いた「子供の心の解放」というテーマ、オープニング映像の原画と動画も鑑賞できます。

今回の展覧会では、 『アルプスの少女ハイジ』の世界を再現したジオラマや、ヨーゼフのいるハイジとおじいさんの山小屋の展示もあり、この2ヶ所は撮影OKでした。 

ヨーゼフのいるアルムの山小屋の展示(撮影OK)

まとめ

高畑勲展はいかがでしたか? 半世紀以上にわたって生み出されたアニメーション制作で、高畑監督は次々に新しい表現を開拓してきました。何よりも興味深いのは、『かぐや姫の物語』の複線となる、「ぼくらのかぐや姫」という初期のノートが新たに発見されたことです。『かぐや姫の物語』 は完成するまでに高畑さんのアニメーション制作に関わった年月と同じ時間を要したと思うと実に感慨深いですね。

アニメという作られたストーリーであるにもかかわらず、高畑作品は日常の風景を大切に、常にリアリティーを追求したものばかりでした。絵を描かない高畑監督の演出術を軸に、膨大な資料から見えてくる構想やイメージは具体的で、素人の私でさえ、高畑さんの制作に対する情熱を実感しました。とくにアニメーターを目指す若者は必見です。

今回、すべてをご紹介しきれなかったので、続きはその②でご紹介します。懐かしい作品が続々と出てきますよ。お楽しみに!

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